エアロフォン雑記帳

Aerophone AE-30に関する備忘録的雑記帳です。

ZOOM A1X Four を Aerophone AE-30 につなげる時のTIPS

AE-30 は、設定をいじることによって、様々なエフェクトをかけることができます。
しかし、その設定方法がちょっと面倒くさいのです。

 

AE-30のエフェクト-例えば、ReverbとかDelayとか-は、全てシーンの中に定義されていています。
それはそれで良い、と言うか「正しい」とは思いますが、今使っているシーンにもう少しReverbをかけたいと思った場合でも、いちいちスマホアプリの”Aerophone PRO EDITOR”や本体のSceneメニューを開いて、シーンに定義されているパラメータをちまちま編集した後、ユーザシーンとして登録し、それを呼び出して使う必要があります。
しかもこのパラメータの設定項目が複雑なので、そこそこ面倒くさい思いをします。
本体メニューの中に、全てのシーン対応するエフェクトが用意されていれば良かったのに・・・
そこで、マルチエフェクタの”ZOOM A1X Four”を買ってみました。

 

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この”A1X Four”は、出力端子の無いアナログ楽器(管・弦楽器など)の演奏音をマイクで拾い、その音にエフェクトをかけるツールです。

同じような商品に”G1X Four”と言うものもあり、こちらは出力端子のある楽器用で、実質的にはエレキギターでの使用を前提に作られたものです。
Aerophoneは電子楽器ですから、当然出力端子が付いています。
ってことは、別に”A1X”を買わなくても,5000円も安い”G1X”で良かったのですが、プリセットとして用意されているエフェクトの中に、サックス(当然、「本物の」ね)用のグローをかけるものがあり、それを使ってみたくて”A1X”を選択しました。
AE-30でサックスのシーンを選ぶと、サムパッドにグローをかける機能がアサインされていますが、あれ、素人にはかけるタイミングが難しいし、操作ミスにより必要のないところでかかってしまう場合もあり、半ば使用を諦めていた、と言うことも、購入に踏み切った理由の一つです。


さて、早速 AE-30 に A1X Four を接続してみましょう。
・・・と、言いたいところですが、ここでちょっと困ったことがあるんですよ。

A1X Four の入力端子はモノラル仕様です。恐らく、エレキギターでの使用を念頭に置いた G1X Four の仕様を、そのまま引き継いだんでしょうね。

対して AE-30 の出力端子は、主にヘッドフォンやイヤフォンを使うためのステレオミニジャックと、標準ステレオフォンケーブルを差すための LINE OUT の二つがあります。
このどちらかにケーブルを差し、A1X Four の入力端子につなぐことになるのですが、上に述べたように AE-30 の二つある出力端子は、いずれもステレオなんです。
つまり、ステレオ出力をアナログ端子で受けることになります。
と言うことは、仕様上、A1X Four で受け取るのは L(左側)チャネルの信号のみとなり、R(右側)チャネルの信号は無視されてしまいます。
実際にステレオフォンケーブル(モノラルケーブルは使わない方が安全です)で両者を接続してみたところ、当然のことながら音が小さかったです。
A1X Four のボリューム調整で、実用域までレベルを上げることはできますが、消えたRチャネルの信号が気になります。
 

で、AE-30 が発音をL-Rにどう振り分けているのか、「AE-03パラメータガイド」で調べてみました。

それによると、PANの振り分けを行う場所とタイミングは、トーン(基本になる音色)中にあらかじめ規定されているものの他、
  1.  トーンにかける一部のMFX(エフェクト)の中
  2.  MFX(エフェクト)をかけたトーン(最大4つ)をマージした後
  3.  MFXをかけない(DRY)トーン(最大4つ)をマージした後
  4.  上記2.3.をマージした後にかける一部のIFX(MFXとは別のエフェクト?)の中
と言う、きわめて複雑なものだと分かりました。
もっともこれは、トーンが”ZEN-Core”の場合に限ったことで、”Super-NATURAL”トーンやドラムキットの場合は、もっとシンプルな処理になります。
 
なるほどね。
当たり前とは言え、やはりLチャネルからだけの信号では、せっかくAE-30が作りこんだ発音を活かすことはできないようです。
ただし、私が調べたところによれば、生楽器に近いトーン、例えば”ALT SAX”などは、上記のどのタイミングでも、PANの設定はされていない、すなわち、L-R両チャネルに均等に音を振り分けているようです。
と言うことは、生楽器に近いトーンを使う限り、信号強度は別にして、L信号だけの出力でも AE-30 の発音そのものを A1X Four に送ることは可能です。
とは言え、どうせならL-R両方の信号を A1X Four に送りたい・・・
でも、上記全てのタイミングで行われているPAN設定を、Aerophone PRO EDITOR(本体のメニューからでもできますが、ちょっと面倒くさい) でLチャネルに全て振り分けるよう設定することは、とても現実的とは言えません。
 
そこで、L-Rに分かれた二つのチャネル信号をマージする変換器を買おうと、方々探しましたが、意外にも見つけられませんでした。
このような用途の変換器は、もしかしたら市販されていないのかもしれません。
となると、PAN設定のコントロールチェンジ(CC#10)を、AE-30のいずれかのキーに割り付けるしかありません。
と言うか、これが一番簡単な方法ですね~。
では、今からそのやり方を説明します。
 
【AE-30 でのPAN設定方法】
例として、S1キーに割り当ててみます。
AE-30本体 のメニューで、
  1. 「Assign / S1_1 Func」 : "CC 10" を選択
  2. 「Assign / S1_1 Release Val」 : ”64” を入力
  3. 「Assign / S1_1 Press Val」 : ”0” を入力
  4. 「Assign / S1_1 Mode」 : ”Latch” を選択

"CC 10" ・・・ PAN を設定するコントロールチェンジ番号
"Release Val" ・・・ S1をボタンを離したときに送られる値
”Press Val” ・・・ S1をボタンを押したときに送られる値
 ※Mode が"Latch"の場合、ボタンを押すたびにこの二つに設定された値でPANが切り替わる
PANの設定値は、”0:Lチャネルのみ”、”64:L-R均等”、"127:Rチャネルのみ"

 

S1キーの使い方は簡単で、

●A1X Four を使う直前にS1キーを押し、出力信号をLチャネルに全振りする。
●A1X Four を使い終わったら、再度S1キーを押して、L-R双方に等分に振り分ける。

まぁ、これをやったところで、シンセ系などのシーンに設定されている AUTO PAN などは、当然ながら無効になりますけどね。

 

FCB1010でAerophone AE-30を制御する(その2)


前回に引き続き、FCB1010でAerophone AE-30を制御する方法のご紹介です。
今回は、AE-30に登録してある複数のフェバリットシーンを、FCB1010のフットスイッチを押すたびに順に切り替える方法を説明したいと思います。

FCB1010の使用法が分からない方は、こちらをご覧ください。


また、前回エントリの、

をご覧いただいてから、今回のエントリをご覧いただく方が、より理解しやすいかと思います。


AE-30のフェバリットシーンをFCB1010のフットスイッチで切り替える方法

まずは、フェバリットシーンを切り替えるためには、どのようなMIDIメッセージが必要かを調べます。

1.「AE-30パラメータガイド」のP67”コントロール・チェンジ一覧”を見る。
この表には、FCB1010などのMIDIコントローラで制御できるAE-30の機能が列挙されています。
機能に関してはちょっと分かりにくい表現もあり、私も全てを理解できてはいません。
おいおい、読み解いていくつもりです。
ともあれ、今回使いたい機能「フェバリットシーンの切り替え」は、

CC#22 Favorite Down」 と 「CC#23 Favorite Up

を使えばよいことが分かりました。

ところで、このパラメータガイドの”コントロール・チェンジ一覧”には、重大な欠陥があります。
それは、CCに付加する値(Value)の記述がすっかり抜けていることです。

このせいで、MIDIコントローラからAE-30の機能を制御することを諦めてしまった方も、もしかしたらいるかもしれませんね。

プログラムチェンジ(PC)と違い、コントロールチェンジ(CC)をMIDIメッセージとして送る場合、1個以上の値をパラメータ(正確にはアーギュメントなんじゃないかな)として付加する必要があります。
例えば、ボリュームを制御するCC#7の場合、ボリュームの大きさを同時に指定しないと、どの位の大きさで音を鳴らせばよいか、制御を受ける側(楽器など)が判断できません。
なので、MIDIメッセージとしてCC#7を送る場合は、同時にボリュームの大きさを指定する値を付加する必要があるのです。

ところが、この”コントロール・チェンジ一覧”には、付加する値が記述されていないため、CC番号が分かっても完全なMIDIメッセージを組み立てることができません。

こりゃ完全に詰まりましたか・・・

いやいや、ご安心ください。
MIDIメッセージを実際にプログラミングした経験豊富な方なら、対処法がすぐにお分かりになると思います。
実は、ほとんどのCCについては、何の値を付加する必要があるのか、だいたい推察できるのです。

上述したCC#7「ボリュームの指定」の場合、0~127の範囲の値を指定することが既知、つまり、ほとんどのMIDI機器において「CC#7の付加値に”0”を指定したら音が鳴らない、そして”127”を指定したら最大の音量で鳴る」と言うことが、既に知られているのです。

また、何らかの機能をON/OFFさせるCCの場合は、”0”を指定すると機能OFF、”127”を指定すると機能ONとなる仕様が一般的です。
一方、”0~63”の範囲のいずれかの数値を付加値とすれば機能OFF、”64~127”のいずれかで機能ONと言うMIDI機器の場合もありますが、とりあえずは”0”でOFF、”127”でONと覚えておけば間違いありません。

ちなみに、付加値として指定する数値は、現仕様では”0”から”127”の間の値しかありません。
このあたり、詳細説明は勘弁してください(笑)

と言うことで、”コントロール・チェンジ一覧”の記述漏れについては、恐らく実害はありません。
それにしても、やっぱり不親切としか言いようがありませんけどね。

さて、気を取り直して話を戻しましょう。

フェバリットシーン切り替えに必要なCC番号が分かったので、これを使ったMIDIメッセージをFCB1010に登録していきます。
例として、フットスイッチ#5に「フェバリットシーンを1つ下に移動」、スイッチ#0に「フェバリットシーンを1つ上に移動」を割り当ててみます。

※以下に述べる一つ一つの操作の意味するところは、

をご覧ください。

まず、フットスイッチ#5に「CC#22 Favorite Down」と付加値としてONを意味する”127”を割り当てます。

2.フットスイッチ#5を押す。
3.DOWNキーを長押して、プログラムモードに入る。
4.UPキーを押す。

ところで、今回使用するMIDIメッセージはCCが一つだけなので、メモリ番号6を使用することにします。(7でも可)
※このあたりの話しが?な方は、前回のエントリご覧ください。

5.フットスイッチ#6を長押しする。

そして、メモリ番号6以外のメモリ領域に登録してあるMIDIメッセージを送信不要にします。
6.フットスイッチの#1、#6、#8、#9以外でLEDが点灯しているフットペダルを長押しする。
フットスイッチ#8および#9は、エクスプレッションペダル制御用ですので、今回は送信してもしなくてよ良いのですが、とりあえず送信対象としておきます。
※エクスプレッションペダル用のメモリ領域(#8、#9)については、以前のエントリで説明した図中の説明文をご覧ください。


7.フットスイッチ#6を押す。
8.UPキーを押す。
9.フットスイッチ#2、続けてもう一度#2を押す。
10.UPキーを押す。
11.フットスイッチ#1、続けて#2、#7と押す。
12.UPキーを押す。
13.DOWNキーを長押しする。

以上で、フットスイッチ#5へ「フェバリットシーンを1つ下に移動」を割り付けることができました。
続けて、フットスイッチ#10へ「フェバリットシーンを1つ上に移動」を割り付けます。

14.フットスイッチ#5を押す。
15.DOWNキーを長押して、プログラムモードに入る。
16.UPキーを押す。
17.フットスイッチ#6を長押しする。
18.フットスイッチの#1、#6、#8、#9以外でLEDが点灯しているフットペダルを長押しする。
19.フットスイッチ#6を押す。
20.UPキーを押す。
21.フットスイッチ#2、続けてもう一度#3を押す。
22.UPキーを押す。
23.フットスイッチ#1、続けて#2、#7と押す。
24.UPキーを押す。25.DOWNキーを長押しする。

これで完成です!

ふぅ~、お疲れさまでした。

FCB1010でAerophone AE-30を制御する(その1)

 
今回のエントリをご覧いただく前に、

をご一読いただくことをお勧めします。

 
それでは、FCB1010でAerophone AE-30を制御する方法について説明します。
と、その前に、「AE-03シーンリスト」と「AE-03パラメータガイド」をROLANDのホームページからダウンロードしておいてくださいね。
では、まず手始めに、AE-30の音色(シーン)をFCB1010のフットスイッチで切り替える方法を説明しましょう。


1.「AE-30シーンリスト」のP3”シーンリスト”を見て、切り替えたいシーンを見つける。

ここでは、例として、カテゴリー#2(Synth Soft Lead) ”Lyrical Lead 2”に切り替えたいとします。
 
2.該当シーン名の左側にある、「MSB」「LSB」「PC」を読み取る。
”Lyrical Lead 2”の場合は次のようになります。
MSB:85  LSB:65  PC:11
 
ここまでが前準備。
いよいよ、FCB1010の設定です。
 
3.シーン切り替えを動作させるフットスイッチを押す。
例として、フットスイッチ#3に動作を登録してみましょう。
フットスイッチ#3を押すと、スイッチ上のLEDが赤く点灯します。

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4.DOWNキーを長押して、プログラムモードに入る。
DOWNキーを長押しすと、上部LED表示部の”PRESET CONFIGURATION”左端のLEDが緑色に点滅します。
ただし、この操作だけではまだプログラムモードには入っておらず、「プログラムモードに入るけどいい?」と確認を求めている状態です。

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5.UPキーを押す。
UPキーを押すことによって”SELECT”が緑色に点灯し、実際にプログラムモードに入ります。
まぁ、エンターキーを押す、って感じですね。
さて、この状態で、フットスイッチのどれか最低一個に赤色のLEDが点灯していると思います。
FCB1010を買ったばかりの場合は#1、#8、#9の三つが点灯しているはずです。

f:id:inakichi88:20220119142504j:plainこのLEDが点灯しているフットスイッチは何なのか・・・

実は、プログラムモードに入ると、各フットスイッチの番号(#1~#9)は、前回のエントリで説明した図中のメモリ領域(全9個)のそれぞれに、次のように一対一に対応しているのです。

 

フットスイッチの番号   メモリ領域
#1~#5    PC(プログラムチェンジ/引き渡す値を持たない)用
#6、#7    CC(コントロールチェンジ/1つの値を引き渡す)用
#8、#9    エクスプレッションペダル制御CC(2つの値を引き渡す)用

前回のエントリで書いた内容を繰り返しますが、
FCB1010は「あるフットスイッチを押すと、PC5個+CC2個、合計7個のMIDIメッセージを同時に送信できる」のです。
そして、「各フットスイッチに、あらかじめMIDIメッセージを格納させておくメモリ領域が9個(上記7個+エクスプレッションペダル用2個)用意されている
のです。
※エクスプレッションペダル用のメモリ領域については、この図中の説明文ご覧ください。
 
で、赤いLEDが点滅している番号に対応しているメモリ領域に、フットスイッチ#3を押したときに送信されるMIDIメッセージが格納されていることを示している・・・
 
いやいや、その通りではあるのですが、それ以外の意味もあるのです。
 
確かに、LEDが点灯しているメモリ領域、この図の場合は#1だから(#8、#9については、少し動作が違うので無視します)、PCが一つ登録されているのは事実です。
だからと言って、他のメモリ領域(例えば#2とか#6など)に、MIDIメッセージが登録されていない、とは言い切れないのです。
赤いLEDが意味するところは、
「このメモリ領域にMIDIメッセージが登録されている」
と言うだけではなく、
「このメモリ領域に登録されているMIDIメッセージのみ送信する」
あるいは、
「このメモリ領域に登録されているMIDIメッセージのみが有効になっている」
と言う意味なのです。


そう、ここまで来ればお分かりかと思いますが、この赤く点灯しているLEDは、前回のエントリで説明した図中の「送信要否フラグ」を表してるのです。つまり、#1が点灯していたら、

フットスイッチ#3(#1じゃない!)が押されたら、PC用メモリ領域#1に格納されているMIDIメッセージ(PC)を送信する。その他のメモリ領域にどんなMIDIメッセージが登録されていても、それらは送信しない。
ことを意味しています。
※エクスプレッションペダル用のメモリ領域(#8、#9)については、前回のエントリで説明した図中の説明文をご覧ください。
 
それでは、いよいよシーン(音色)切り替えのMIDIメッセージを登録していきます。
 
シーン切り替えに必要な手続きは、以下の通りです。
  1. MSB値とLSB値を使ってバンクを切り替える
  2. プログラムチェンジにシーンの番号を指定する
これを具体的なMIDIメッセージに置き換えていきます。

MIDIに詳しくない方に、上記が何を意味しているか説明するのは難しいので、申し訳ないのですが割愛させてください。

と、その前にちょっとした手続きを踏まねばなりません。


今から登録していきたいMIDIメッセージは、

 ・バンク切り替えのため、MSB指定用とLSB指定用が1つづつ、計2つのCC
 ・シーン番号を指定するPCが1つ
です。
 
CCはメモリ番号#6と#7にしか登録できないので、#6と#7を両方使います。
また、PCはメモリ番号#1~#5に計5つ登録できますが、今回は1つしか使わないので、#1を使うことにします。
で、現在LEDが赤く点灯しているフットスイッチは、#1と#8と#9の3つです。
つまり、フットスイッチ#3を押したときに、#1(PC)、#8および#9(エクスプレッションペダル制御用)に登録してあるMIDIメッセージが送信されることになります。

これから登録していくPCに関しては、現在送信可能となっているメモリ番号#1を上書きして使いましょう。
CC2個に関しては、メモリ番号#6と#7の両方を使いますが、これらは現在、送信対象になっていません。
ですので、これからMIDIメッセージを書き込む#6と#7を、送信可能にしなければなりません。

※もし既にフットスイッチ#6のLEDが点灯している場合は、次のステップは不要です。
6.フットスイッチ#6を長押しする。

※もし既にフットスイッチ#7のLEDが点灯している場合は、次のステップは不要です。
7.フットスイッチ#7を長押しする。

上記ステップ6および7によって、フットスイッチ#6および#7のLEDが赤く点灯し、メモリ番号#6、#7に格納されている(実際は今から登録する)MIDIメッセージが、送信対象になりました。

f:id:inakichi88:20220119142451j:plainここで注意しなくてはならない点があります。

送信不要なメモリ番号に対してLEDが点灯していたら、そのメモリ番号の送信可否をOFFにする必要があるのです。

今回はたまたま、既に送信対象となっているメモリ番号#1を上書き使用するので、何の対処も不要ですが、もし、今回はメッセージを送信する必要がないメモリ番号のLEDが点灯していたら、次の操作で送信不要を指定してください。
 
8.フットスイッチの#1、#6、#7、#8、#9以外でLEDが点灯しているフットスイッチを長押しする。
この操作により、対象となるフットペダルのLEDが消灯し、そのメモリ番号に登録されたMIDIメッセージは送信されなくなります。
複数のLEDをOFFにするには、上記操作を繰り返してください。

さて、バンク切り替えの説明に戻ります。

まず、バンクを切り替えるためのコントロールチェンジ番号を調べます。
※実は(多分)全てのMIDI機器で、バンク切り替えのCC番号は一緒ですので、実際は機器ごとに調べ直す必要は無いはずです。

 

「AE-03パラメータガイド」のP67”コントロール・チェンジ一覧”をご覧ください。
この表に書かれているCCの中で、バンク切り替えに必要となるのは2つ。”Bank Select MSB””Bank Select LSB” です。
表中の「コントロールする機能」からこの2つを探し、表の左に書いてある「CC#」を読み取ります。
Bank Select MSB : CC#0
Bank Select LSB : CC#32
そして、これら2つのCCに、値として「AE-30シーンリスト」に書かれていた切り替えたいシーンのMSB(85)およびLSB(65)を与えてやればよいのです。

 

具体的には、
 CC用メモリ1に、CC番号”0”と値”85”を書き込む
 CC用メモリ2に、CC番号”32”と値”65”を書き込む
ことがシーン切り替えの第一段階となります。
ちなみに LSB は、シーンカテゴリごとに別の番号が振られているので、バンクセレクトを指定することは、シーンカテゴリを指定していることに他なりません。
 
FCB1010での操作は、次のようになります。
 
まず、MIDIメッセージ「CC#0+85」を登録するため、登録するメモリ領域(#6)をフットスイッチで指定しましょう。
 
9.フットスイッチ#6を押し、続けてUPキーを押す。
フットスイッチ#6のLEDが点滅すると同時に、"NUMBER"LEDが緑色に点灯します。
また、上部8セグ表示に何らかの数値(既に登録されている数値)が表示され、1桁目が点滅し入力待ち状態に入ります。
これにより、メモリ番号#6の領域にMIDIメッセージを書き込む状態になりました。

f:id:inakichi88:20220119142506j:plainさあ、CC番号を入力しましょう。

 

10.フットスイッチ#0を押す。
これにより、CC番号として数値の”0”が入力されました。
LEDに2桁以上の数値が既に入力されていた場合は、”00”もしくは”000”を入力(上書き)するため、2回または3回、フットスイッチ#0を押してください。
 
11.UPキーを押す。
UPキーを押して入力値(CC#0)を確定すると、上部"Value1"LEDが緑色に点灯すると同時に、数値(元々登録されていた数値)がLEDに表示され、1桁目が点滅します。
この数値は、CC#0に付加する値(Valuie1)です。

f:id:inakichi88:20220119142446j:plain次に、CC#0に付加する値(85)を入力します。

 

12.フットスイッチ#8、続けてフットスイッチ#5を押す。
これで、値として”85”が入力されました。

 

13.UPキーを押す。
入力した値を確定します。
フットスイッチ#6のLEDが点滅から点灯に変化し、上部LED”PRESET CONFIGURATION”の”SELECT”LEDが緑色に点灯し、メモリ番号選択状態になります。
 
ここまでの操作で、CC#0+85、すなわち、値85を付加したMIDIメッセージ”Bank Select MSB”をメモリへ登録することができました。
同様に、”Bank Select LSB”をメモリへ登録します。
MSBの登録と全く同じ手順なので、手順のみ列挙します。

 

・フットスイッチ#7を押す。
・UPキーを押す。
・フットスイッチ#3、#2を続けて押す。
・UPキーを押す。
・フットスイッチ#6、#5を続けて押す。
・UPキーを押す。

 

これで”Bank Select LSB”のメモリ登録が終了しました。
先に登録したMSBと併せ、「バンク切り替え」を行うMIDIメッセージ登録が完了したことになります。
 
さて、もう一つ、「プログラムチェンジにシーンの番号を指定する」が残っています。
続けてサクッと登録してしまいましょう。

 

プログラムチェンジ(PC)を登録することができるのは、メモリ番号#1から#5までで、今回は#1に登録するんでしたね。

 

14.フットスイッチ#1を押し、続けてUPキーを押す。
フットスイッチ#1のLEDが点滅すると同時に、"NUMBER"LEDが緑色に点灯します。
また、上部8セグ表示に何らかの数値(既に登録されている数値)が表示され、1桁目が点滅し入力待ち状態に入ります。
これにより、メモリ番号#1の領域にMIDIメッセージを書き込む状態になりました。
このあたり、CCを登録したステップ9と同じ手順です。

f:id:inakichi88:20220119142454j:plain次に、PC番号を入力します。

「AE-30シーンリスト」から読み取った値は、”11”でしたね。

 

15.フットスイッチ#1を押した後、もう一度フットスイッチ#1を押す。
これにより、PC番号として数値の”11”が入力されました。
 
16.UPキーを押す。
UPキーを押して数値を確定すると、上部”SELECT”LEDが点灯します。
同時にフットスイッチ#1のLEDが点滅から消灯に変わり、メモリ番号選択状態に戻ります。

 

コントロールチェンジ(CC)と違ってプログラムチェンジ(PC)には、同時に設定する値(Value)がありません。
したがって、これでPCの登録が完了した、と言うことになります。

さて、これで全てのMIDIメッセージが登録できました。
プログラムモードを抜け、通常モードに戻りましょう。

 

17.DOWNキーを長押しする。
今登録した、フットスイッチ#3のLEDが点灯し、上部8セグがバンク表示に戻りました。
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これで FCB1010のプログラミングが完了しました。
では、実際にFCB1010を操作して、AE-30のシーンが変わるかどうか確認してみましょう。
 
AE-30 と FCB1010 を MIDIケーブルでつなぎます。
MIDIケーブルは AE-30の"IN"に、FCB1010の"OUT"に接続します。
それでは、上記を登録したフットペダル#3を、1回だけ押してみましょう。
おっ!
シーンが切り替わり、別の音色に変わりました!!
ん?待てよ・・・
これって、切り替えたいシーンじゃないような・・・
試しにもう1回、#3を押してみましょう。
あれ?今度は指定したシーンに切り替わりましたよ。
でも、なぜ????
 
実は FCB1010 の仕様上、1つのペダルに CC と PC を同時に登録した場合、PC が先に出力されてしまうのです。
ここで、CC と PC の役割を思い出してください。
CC・・・バンクの切り替え(シーンカテゴリの切り替え)
PC・・・シーン番号の指定
でしたね。
と言うことは、ペダルを1回押した場合、シーンカテゴリを切り替える前にシーン番号を送っていることになるので、現在(ペダルを押す前)設定されているシーンカテゴリは変更されず、シーン番号のみが変更されることになるのです。
例えば、現在のシーン設定が、
シーンカテゴリ:#5(Woodwinds)
シーン番号:#1(Soprano Sax 1)
になっている状態で#3ペダル(シーンカテゴリ:#2、シーン番号:#11)を押すと、シーンカテゴリを#2(Synth Soft Lead)へ切り替える信号を送る前に、シーン番号#11への切り替え信号が送られてしまい、結果的に、同じシーンカテゴリのシーン番号#11-すなわち"Alt Sax 2 Vib"-へ切り替わってしまうのです。
そして、その後にシーンカテゴリが#2(Synth Soft Lead)へ切り替わるため、もう一度ペダルを押したときに、当初の予定だった#11(Lyrical Lead 2)へ切り替わる・・・このような理屈になります。
FCB1010 の設定で、PC より先に CC を送ることは、恐らくできない思いますので、ペダル1回押しでのシーン変更は、諦めるしかなさそうです。
 
これにて、AE-30のシーン切り替え制御の説明は終わりです。
分かりにくい部分がありましたら、コメントでご質問ください。
また、内容に誤り等があった場合も、コメントでご指摘いただけると助かります。
 
次回は、FCB1010のフットスイッチを押して、AE-30に登録してあるフェバリット音色を順に切り替える方法を説明しようと思います。

 

behringer FCB1010の使用法でお悩みの方へ

 

ブログ一発目の記事として、今回は behringerMIDIフットコントローラ FCB1010の「使用法が分からない」、もしくは、「使用法は分かったけれど、何かしっくりこない」とお悩みの方へ、少しくらいはお力になれる・・・かもしれない話しをしたいと思います。

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私がFCB1010を買ったのは、Aerophone AE-30の様々なパラメータを切り替えながら演奏できたら恰好良いだろう、と思ったからです。
まぁ、人前で演奏することは考えていないので(と言うか、そこまでのレベルに達するには相当時間がかかる、ってことです)、いらないっちゃいらないのですが、とりあえず勢いで買っちゃいました。
形から入るのがジジィ趣味、なのですよ。

ところが、買ったは良いものの、いざ使おうとすると、製品マニュアルを読んでも操作法が全く理解できませんでした。
何と言うか、マニュアルに記載されている情報が系統立てて整理されておらず、個々の記述が結局何を意味しているのか、そこがさっぱり分からないのです。

そこでネット上の情報を漁ったところ、YouTubeにたくさんの動画が上がっていました。
ところが、それが全部英語(笑)
私はそこそこ英語が理解できますが、ネイティブが普通に使う表現に疎いため、読解が難しかったです。
そんなこんなで、半日かけてやっとこさ操作法を理解し、無事AE-30を制御することができました。

そんな経験から言うと、操作法を覚えるには、まずはその前提となるFCB1010の仕様、と言うか設計思想みたいなものを理解するのが早道に思えました。
一見複雑に思える操作法がスッキリ理解できる-そんな予備知識からお話しします。

※以下、一通りMIDIに関する知識がある方向けに話しを進めます。

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まず、次のイラストで、FCB1010の外観を確認してみましょう。

f:id:inakichi88:20220119142457j:plainご覧の通り、左側にフットスイッチが10個(#1~0)、そして右側にエクスプレッションペダルが2個あります。
このスイッチやペダルを使ってFCB1010に接続したMIDI機器を制御するには、スイッチあるいはペダルに実行させたい命令(MIDIメッセージ)をあらかじめ書き込んでおく(プログラミング)必要があります。
その具体的な方法をお話しする前に、FCB1010の仕様を確認しておきましょう。
(※説明の簡略化のため、MIDI Noteについては省略します)

【フットスイッチを押したときの仕様】
フットスイッチを押したとき、5つのPC(プログラムチェンジ)と、2つのCC(コントロールチェンジ)を、同時に送信することができる。

そして、これを聞いた私は、次のように勘違い(と言うか、思い込みかな?)してしまったのです。

なるほど。
フットスイッチごとにMIDIメッセージを書き込むメモリ領域が用意されているのだな。
で、メッセージを書き込むときは、フットスイッチの番号を指定して、そこに割り付けたいCCとかPCを書き込んでおく・・・ってことか。
単純じゃ~ん。


例えば、

フットスイッチ#1 : Volume制御のため CC#07 1つのみを書き込む
フットスイッチ#2 : バンク選択のため CC#01 および CC#32、さらに選択したバンクに送る PC の計3つを書き込む。

って感じです。

ところが、違うんですよ、これ。

皆さんの中にも、きっと私と同じ思い込みから、この後、訳が分からなくなってしまった方がいるはずです。

正解は、

全てのフットスイッチ1つずつに、「PC書き込み用メモリ領域が5つ」、「CC書き込み用メモリ領域が2つ」用意されおり、各メモリ領域に「書き込まれたメッセージを実際に送信するかどうか選択するフラグ(「スイッチ」の方が正しい表現かもしれませんが、ややこしいから「フラグ」で)」が用意されている。

なのです。

つまり、使う/使わないに関わらず、全てのフットスイッチには、5個のPC格納用メモリ領域と2個のCC格納用領域が最初から用意されているのです。

そして、上記のフットスイッチ#1を例にとると、

CCを1つしか使わないから、2つあるCC格納用領域のどちらか1つに#07とValueを入れ、その領域の送信フラグをONにし、もう一つのCC格納用領域およ5個のPC格納用領域の送信要否フラグをOFFにする。

と言う操作が必要になります。
まとめると、次の図のようになります。

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さて、あとは実際にFCB1010を使ってMIDIメッセージを書き込むだけなのですが、この操作も結構複雑でややこしいのです。
ですが、ここまで書いてきたことをご理解いただければ、なぜこのような複雑な操作が必要なのか、そして操作の一つ一つの意味をきっとご理解いただけると思います。

それでは次回のエントリでは、実際にFCB1010を使ってAerophone AE-30を制御する方法を述べます。
その過程で、FCB1010で必要な操作の意味を知ることができるはずです。

具体的なFCB1010の操作を順を追って説明しますので、他のMIDI機器を制御したい方にも参考になると思いますよ!