エアロフォン雑記帳

Aerophone AE-30に関する備忘録的雑記帳です。

FCB1010でAerophone AE-30を制御する(その1)

 
今回のエントリをご覧いただく前に、

をご一読いただくことをお勧めします。

 
それでは、FCB1010でAerophone AE-30を制御する方法について説明します。
と、その前に、「AE-03シーンリスト」と「AE-03パラメータガイド」をROLANDのホームページからダウンロードしておいてくださいね。
では、まず手始めに、AE-30の音色(シーン)をFCB1010のフットスイッチで切り替える方法を説明しましょう。


1.「AE-30シーンリスト」のP3”シーンリスト”を見て、切り替えたいシーンを見つける。

ここでは、例として、カテゴリー#2(Synth Soft Lead) ”Lyrical Lead 2”に切り替えたいとします。
 
2.該当シーン名の左側にある、「MSB」「LSB」「PC」を読み取る。
”Lyrical Lead 2”の場合は次のようになります。
MSB:85  LSB:65  PC:11
 
ここまでが前準備。
いよいよ、FCB1010の設定です。
 
3.シーン切り替えを動作させるフットスイッチを押す。
例として、フットスイッチ#3に動作を登録してみましょう。
フットスイッチ#3を押すと、スイッチ上のLEDが赤く点灯します。

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4.DOWNキーを長押して、プログラムモードに入る。
DOWNキーを長押しすと、上部LED表示部の”PRESET CONFIGURATION”左端のLEDが緑色に点滅します。
ただし、この操作だけではまだプログラムモードには入っておらず、「プログラムモードに入るけどいい?」と確認を求めている状態です。

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5.UPキーを押す。
UPキーを押すことによって”SELECT”が緑色に点灯し、実際にプログラムモードに入ります。
まぁ、エンターキーを押す、って感じですね。
さて、この状態で、フットスイッチのどれか最低一個に赤色のLEDが点灯していると思います。
FCB1010を買ったばかりの場合は#1、#8、#9の三つが点灯しているはずです。

f:id:inakichi88:20220119142504j:plainこのLEDが点灯しているフットスイッチは何なのか・・・

実は、プログラムモードに入ると、各フットスイッチの番号(#1~#9)は、前回のエントリで説明した図中のメモリ領域(全9個)のそれぞれに、次のように一対一に対応しているのです。

 

フットスイッチの番号   メモリ領域
#1~#5    PC(プログラムチェンジ/引き渡す値を持たない)用
#6、#7    CC(コントロールチェンジ/1つの値を引き渡す)用
#8、#9    エクスプレッションペダル制御CC(2つの値を引き渡す)用

前回のエントリで書いた内容を繰り返しますが、
FCB1010は「あるフットスイッチを押すと、PC5個+CC2個、合計7個のMIDIメッセージを同時に送信できる」のです。
そして、「各フットスイッチに、あらかじめMIDIメッセージを格納させておくメモリ領域が9個(上記7個+エクスプレッションペダル用2個)用意されている
のです。
※エクスプレッションペダル用のメモリ領域については、この図中の説明文ご覧ください。
 
で、赤いLEDが点滅している番号に対応しているメモリ領域に、フットスイッチ#3を押したときに送信されるMIDIメッセージが格納されていることを示している・・・
 
いやいや、その通りではあるのですが、それ以外の意味もあるのです。
 
確かに、LEDが点灯しているメモリ領域、この図の場合は#1だから(#8、#9については、少し動作が違うので無視します)、PCが一つ登録されているのは事実です。
だからと言って、他のメモリ領域(例えば#2とか#6など)に、MIDIメッセージが登録されていない、とは言い切れないのです。
赤いLEDが意味するところは、
「このメモリ領域にMIDIメッセージが登録されている」
と言うだけではなく、
「このメモリ領域に登録されているMIDIメッセージのみ送信する」
あるいは、
「このメモリ領域に登録されているMIDIメッセージのみが有効になっている」
と言う意味なのです。


そう、ここまで来ればお分かりかと思いますが、この赤く点灯しているLEDは、前回のエントリで説明した図中の「送信要否フラグ」を表してるのです。つまり、#1が点灯していたら、

フットスイッチ#3(#1じゃない!)が押されたら、PC用メモリ領域#1に格納されているMIDIメッセージ(PC)を送信する。その他のメモリ領域にどんなMIDIメッセージが登録されていても、それらは送信しない。
ことを意味しています。
※エクスプレッションペダル用のメモリ領域(#8、#9)については、前回のエントリで説明した図中の説明文をご覧ください。
 
それでは、いよいよシーン(音色)切り替えのMIDIメッセージを登録していきます。
 
シーン切り替えに必要な手続きは、以下の通りです。
  1. MSB値とLSB値を使ってバンクを切り替える
  2. プログラムチェンジにシーンの番号を指定する
これを具体的なMIDIメッセージに置き換えていきます。

MIDIに詳しくない方に、上記が何を意味しているか説明するのは難しいので、申し訳ないのですが割愛させてください。

と、その前にちょっとした手続きを踏まねばなりません。


今から登録していきたいMIDIメッセージは、

 ・バンク切り替えのため、MSB指定用とLSB指定用が1つづつ、計2つのCC
 ・シーン番号を指定するPCが1つ
です。
 
CCはメモリ番号#6と#7にしか登録できないので、#6と#7を両方使います。
また、PCはメモリ番号#1~#5に計5つ登録できますが、今回は1つしか使わないので、#1を使うことにします。
で、現在LEDが赤く点灯しているフットスイッチは、#1と#8と#9の3つです。
つまり、フットスイッチ#3を押したときに、#1(PC)、#8および#9(エクスプレッションペダル制御用)に登録してあるMIDIメッセージが送信されることになります。

これから登録していくPCに関しては、現在送信可能となっているメモリ番号#1を上書きして使いましょう。
CC2個に関しては、メモリ番号#6と#7の両方を使いますが、これらは現在、送信対象になっていません。
ですので、これからMIDIメッセージを書き込む#6と#7を、送信可能にしなければなりません。

※もし既にフットスイッチ#6のLEDが点灯している場合は、次のステップは不要です。
6.フットスイッチ#6を長押しする。

※もし既にフットスイッチ#7のLEDが点灯している場合は、次のステップは不要です。
7.フットスイッチ#7を長押しする。

上記ステップ6および7によって、フットスイッチ#6および#7のLEDが赤く点灯し、メモリ番号#6、#7に格納されている(実際は今から登録する)MIDIメッセージが、送信対象になりました。

f:id:inakichi88:20220119142451j:plainここで注意しなくてはならない点があります。

送信不要なメモリ番号に対してLEDが点灯していたら、そのメモリ番号の送信可否をOFFにする必要があるのです。

今回はたまたま、既に送信対象となっているメモリ番号#1を上書き使用するので、何の対処も不要ですが、もし、今回はメッセージを送信する必要がないメモリ番号のLEDが点灯していたら、次の操作で送信不要を指定してください。
 
8.フットスイッチの#1、#6、#7、#8、#9以外でLEDが点灯しているフットスイッチを長押しする。
この操作により、対象となるフットペダルのLEDが消灯し、そのメモリ番号に登録されたMIDIメッセージは送信されなくなります。
複数のLEDをOFFにするには、上記操作を繰り返してください。

さて、バンク切り替えの説明に戻ります。

まず、バンクを切り替えるためのコントロールチェンジ番号を調べます。
※実は(多分)全てのMIDI機器で、バンク切り替えのCC番号は一緒ですので、実際は機器ごとに調べ直す必要は無いはずです。

 

「AE-03パラメータガイド」のP67”コントロール・チェンジ一覧”をご覧ください。
この表に書かれているCCの中で、バンク切り替えに必要となるのは2つ。”Bank Select MSB””Bank Select LSB” です。
表中の「コントロールする機能」からこの2つを探し、表の左に書いてある「CC#」を読み取ります。
Bank Select MSB : CC#0
Bank Select LSB : CC#32
そして、これら2つのCCに、値として「AE-30シーンリスト」に書かれていた切り替えたいシーンのMSB(85)およびLSB(65)を与えてやればよいのです。

 

具体的には、
 CC用メモリ1に、CC番号”0”と値”85”を書き込む
 CC用メモリ2に、CC番号”32”と値”65”を書き込む
ことがシーン切り替えの第一段階となります。
ちなみに LSB は、シーンカテゴリごとに別の番号が振られているので、バンクセレクトを指定することは、シーンカテゴリを指定していることに他なりません。
 
FCB1010での操作は、次のようになります。
 
まず、MIDIメッセージ「CC#0+85」を登録するため、登録するメモリ領域(#6)をフットスイッチで指定しましょう。
 
9.フットスイッチ#6を押し、続けてUPキーを押す。
フットスイッチ#6のLEDが点滅すると同時に、"NUMBER"LEDが緑色に点灯します。
また、上部8セグ表示に何らかの数値(既に登録されている数値)が表示され、1桁目が点滅し入力待ち状態に入ります。
これにより、メモリ番号#6の領域にMIDIメッセージを書き込む状態になりました。

f:id:inakichi88:20220119142506j:plainさあ、CC番号を入力しましょう。

 

10.フットスイッチ#0を押す。
これにより、CC番号として数値の”0”が入力されました。
LEDに2桁以上の数値が既に入力されていた場合は、”00”もしくは”000”を入力(上書き)するため、2回または3回、フットスイッチ#0を押してください。
 
11.UPキーを押す。
UPキーを押して入力値(CC#0)を確定すると、上部"Value1"LEDが緑色に点灯すると同時に、数値(元々登録されていた数値)がLEDに表示され、1桁目が点滅します。
この数値は、CC#0に付加する値(Valuie1)です。

f:id:inakichi88:20220119142446j:plain次に、CC#0に付加する値(85)を入力します。

 

12.フットスイッチ#8、続けてフットスイッチ#5を押す。
これで、値として”85”が入力されました。

 

13.UPキーを押す。
入力した値を確定します。
フットスイッチ#6のLEDが点滅から点灯に変化し、上部LED”PRESET CONFIGURATION”の”SELECT”LEDが緑色に点灯し、メモリ番号選択状態になります。
 
ここまでの操作で、CC#0+85、すなわち、値85を付加したMIDIメッセージ”Bank Select MSB”をメモリへ登録することができました。
同様に、”Bank Select LSB”をメモリへ登録します。
MSBの登録と全く同じ手順なので、手順のみ列挙します。

 

・フットスイッチ#7を押す。
・UPキーを押す。
・フットスイッチ#3、#2を続けて押す。
・UPキーを押す。
・フットスイッチ#6、#5を続けて押す。
・UPキーを押す。

 

これで”Bank Select LSB”のメモリ登録が終了しました。
先に登録したMSBと併せ、「バンク切り替え」を行うMIDIメッセージ登録が完了したことになります。
 
さて、もう一つ、「プログラムチェンジにシーンの番号を指定する」が残っています。
続けてサクッと登録してしまいましょう。

 

プログラムチェンジ(PC)を登録することができるのは、メモリ番号#1から#5までで、今回は#1に登録するんでしたね。

 

14.フットスイッチ#1を押し、続けてUPキーを押す。
フットスイッチ#1のLEDが点滅すると同時に、"NUMBER"LEDが緑色に点灯します。
また、上部8セグ表示に何らかの数値(既に登録されている数値)が表示され、1桁目が点滅し入力待ち状態に入ります。
これにより、メモリ番号#1の領域にMIDIメッセージを書き込む状態になりました。
このあたり、CCを登録したステップ9と同じ手順です。

f:id:inakichi88:20220119142454j:plain次に、PC番号を入力します。

「AE-30シーンリスト」から読み取った値は、”11”でしたね。

 

15.フットスイッチ#1を押した後、もう一度フットスイッチ#1を押す。
これにより、PC番号として数値の”11”が入力されました。
 
16.UPキーを押す。
UPキーを押して数値を確定すると、上部”SELECT”LEDが点灯します。
同時にフットスイッチ#1のLEDが点滅から消灯に変わり、メモリ番号選択状態に戻ります。

 

コントロールチェンジ(CC)と違ってプログラムチェンジ(PC)には、同時に設定する値(Value)がありません。
したがって、これでPCの登録が完了した、と言うことになります。

さて、これで全てのMIDIメッセージが登録できました。
プログラムモードを抜け、通常モードに戻りましょう。

 

17.DOWNキーを長押しする。
今登録した、フットスイッチ#3のLEDが点灯し、上部8セグがバンク表示に戻りました。
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これで FCB1010のプログラミングが完了しました。
では、実際にFCB1010を操作して、AE-30のシーンが変わるかどうか確認してみましょう。
 
AE-30 と FCB1010 を MIDIケーブルでつなぎます。
MIDIケーブルは AE-30の"IN"に、FCB1010の"OUT"に接続します。
それでは、上記を登録したフットペダル#3を、1回だけ押してみましょう。
おっ!
シーンが切り替わり、別の音色に変わりました!!
ん?待てよ・・・
これって、切り替えたいシーンじゃないような・・・
試しにもう1回、#3を押してみましょう。
あれ?今度は指定したシーンに切り替わりましたよ。
でも、なぜ????
 
実は FCB1010 の仕様上、1つのペダルに CC と PC を同時に登録した場合、PC が先に出力されてしまうのです。
ここで、CC と PC の役割を思い出してください。
CC・・・バンクの切り替え(シーンカテゴリの切り替え)
PC・・・シーン番号の指定
でしたね。
と言うことは、ペダルを1回押した場合、シーンカテゴリを切り替える前にシーン番号を送っていることになるので、現在(ペダルを押す前)設定されているシーンカテゴリは変更されず、シーン番号のみが変更されることになるのです。
例えば、現在のシーン設定が、
シーンカテゴリ:#5(Woodwinds)
シーン番号:#1(Soprano Sax 1)
になっている状態で#3ペダル(シーンカテゴリ:#2、シーン番号:#11)を押すと、シーンカテゴリを#2(Synth Soft Lead)へ切り替える信号を送る前に、シーン番号#11への切り替え信号が送られてしまい、結果的に、同じシーンカテゴリのシーン番号#11-すなわち"Alt Sax 2 Vib"-へ切り替わってしまうのです。
そして、その後にシーンカテゴリが#2(Synth Soft Lead)へ切り替わるため、もう一度ペダルを押したときに、当初の予定だった#11(Lyrical Lead 2)へ切り替わる・・・このような理屈になります。
FCB1010 の設定で、PC より先に CC を送ることは、恐らくできない思いますので、ペダル1回押しでのシーン変更は、諦めるしかなさそうです。
 
これにて、AE-30のシーン切り替え制御の説明は終わりです。
分かりにくい部分がありましたら、コメントでご質問ください。
また、内容に誤り等があった場合も、コメントでご指摘いただけると助かります。
 
次回は、FCB1010のフットスイッチを押して、AE-30に登録してあるフェバリット音色を順に切り替える方法を説明しようと思います。